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365日のJournal

  

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June, 2022

june09 june11

夏前の花壇で

 

 それらしい雨の日が一週間もあったでしょうか? 今年の梅雨はあっさりと明けてしまって、降り注ぐような夏空です。

 オオバギボウシやヤマユリが咲いたりすれば、これで夏本番!となるのでしょうが、植物たちもまだ準備がなかったようで(かといってあわてるような様子もないのですが)、いつもの夏よりは初々しく、柔らかなように見えるのです。

 公園の大きな花壇も、まだ夏の植え替えがこれからで、枯れ草と、花が混在し、ラベンダーの中にチガヤが出て、クマバチもミツバチもいっしょで、無秩序で美しく、楽し気です。どうも僕はこういう束縛の無い世界が好きなのでしょうか?

「あなたといると、毎日が夏休みみたいよ」そう言われたことが何度かあります。いい意味なのか、悪いのか? みんながやりたいだけやれて、想定外のこともいあっぱいあって、見たことがないような事が起こる時、僕はここぞとばかりにいきいきしてしまうのです。

 本当は、季節が、まったく暦の通りなんて年はないのです。いつもどこか暑すぎたり寒すぎたり、雨が降ったり、降らなかったり、何かある。だからみんな季節を気にする。

 次の素晴らしい出来事を待ち望む。それでこの世界に生きる喜びを、いっそうに感じるのです。

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February, 2022

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春はいつ始まるの?

 

 2月も終わる頃になれば、もう冬の寒さにも嫌気がさし、どこかに春の兆しがないかと、あちこち探しているのです。凍り付いた田んぼにアカガエルたちがやってきて、くるるる、くるるると鳴きあいます。ヘビなどの天敵が目を覚ます前に、卵を産んでおくためです。

 雑木林で最初に咲くのはウグイスカグラ。2mほどになる小高木に小さなピンクの花が咲きます。早いものは12月のうちから咲きますから、これは冬の花か春なのか、季節をまたぐ花なのでしょう。

 遠目に丘陵が見える丘に立ち、雑木林の木々を見ます。枝先がわずかに赤身を帯びたように見えるのは、僕の希望が入っているのでしょうか?堅く閉じた冬芽が、少しでも膨らめば、森に赤身が差すはずです。

 ある午後、森に斜めに光が入り、木々の梢が輝きました。まるで雪が降ったかのように、白く輝いて見えました。冬芽や細い枝先の産毛に、光が反射したのでしょうか? 春を迎える木々の力が輝くような光景です。もう何十年も、いつも自然を見つめている僕も、初めて見るものでした。写真にちゃんと写っていましたから、僕の希望が幻覚になったのではないようです。

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March, 2022

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ヤマザクラ

 

 万葉集に出てくる桜はこのヤマザクラですね。有名な吉野の桜もそうです。昔から日本の低山に自生していた桜ということです。

 ソメイヨシノは花が咲いた後に葉が出ますが、ヤマザクラは花と葉が同時に出る。そしてその葉が最初赤身がかっているのが特徴です。派手な勢いはソメイヨシノに譲りますが、なんとも風情があるのです。

 ソメイヨシノは江戸時代に掛け合わせで作られた園芸品種です。日本中に沢山植えられていますが、すべてが一本の木から取られたクローンですから、一気に咲くわけです。
 ヤマザクラは野生種ですから、みんな性質が違います。花が早いもの、遅いもの、花付にいいもの、悪いものいろいろなのです。
 桜はいろいろあって難しいと思う人は、まずこのヤマザクラと、ソメイヨシノ、そしてオオシマザクラの違いだけでも覚えていただければ。いいかと思います。
 オオシマザクラも野生種で、白く大ぶりな花と同時に、緑色の葉が出るのが特徴です。香りがとてもよく、桜餅の原料にもしますから、香りで覚えるのもいいですね。

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April, 2022

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青い谷のカントウタンポポ

 

 戦国時代の山城の跡が、4月の緑に包まれています。かつて大きな池があったこの場所は、今は水がほとんどなく、広い谷のようになっています。そこにカントウタンポポが夢のように群生しているのです。
 繁殖力の強いセイヨウタンポポに追い出され、カントウタンポポは絶滅してしまうのではないか? と心配されますが、ここにあるのは全てカントウタンポポです。

 このカントウタンポポの群生に気付いたのは、もう20年も前のことです。「かつて敵の侵入を食い止めた山城の急峻な地形が、今、外来植物の侵入を防いでいる」というシナリオが頭に浮かびましたが、今はそうではないと思っています。

 道路の中央分離帯とか、駐車場の隅とか、日当たりがよく乾燥気味の場所では、セイヨウタンポポが圧倒的に優勢ですが、こんな木洩れ日の落ちる、しっとりした森の原っぱなら、カントウタンポポは美しいハビタット(生息地)を継承し続けます。
 両種は生態的には競合しないのです。ただガラガラと自然を壊したような場所に生えるセイヨウタンポポが目立っていただけです。
 変わらない風景のなかには、変わらぬ日本の花が咲くのです。

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July, 2021

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ちだけさし

 

 夏がきて、ふっと気をぬいたような午後に、湿気のある林縁で、チダケサシの花に出会いました。ああ、こんなところに、こんな素敵な群生があったのか!と、不意をつかれたようにあわて、カメラを向けました。

 夏に雑木林に出るチチタケ(乳茸)というきのこがあります。傷つけば白い乳液を出すのが名の由来。食べる人は多くはありませんが、日本のきのこの中でも、最も味のいいきのこです。

 チチタケをチダケと呼ぶ地方があり、このきのこを刺して歩くのによいからということで、チダケサシの名前がついたわけです。チダケサシの茎は背が高い野草ですが、茎は丸く細い。だからかなり硬く強いのです。その針金のような茎をチチタケに差し、四つも五つも差しながら里山を歩けたら、どんなに幸せでしょう。大きな物一つで最高のパスタ一人前が作れます。

 僕はチチタケをたくさん採ったことが何度もあります。チダケサシを見たことも何度もあります。二つ同時がないのです。せめて三つ差して歩いてみたいな、と思っています。
 そういえば去年の夏、ホタルブクロにホタルを入れる夢は実現させました。その話はまたしましょう。

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May, 2022

may13 may19

中洲アナーキー

 

 その日、仕事が午前中で終わる予定だったので、あそこの森へ寄ろうか、あの田んぼへ行ってみようかと、楽しみにしていたのです。
 ところが昼間から小雨が降りだし、あきらめかけていたところ、多摩川を渡る前から空が明るくなりました。急遽ルートを変更し、河原へ降りられる場所を探します。

 曇り空の柔らかな光の下、半島のように伸びる中州を見下ろすと、なにか紫色の花がいくつも大きな塊になって咲いているようです。中州へ渡るには、どこかで川を渡らなければいけません。少し考えましたが、もうこの後は人に会う予定もありませんので、そのままずんずんと水に入り、ひざ下まで濡らして、中州に上陸しました。そこは本当に息をのむような野の花の天国でした。 

 薄紫の雲のように見えたのは、豆科のナヨクサフジでした。花の先が白く、元に行くにつれグラデーションで濃い紫になりますから、花が光っているように見えます。マツヨイグサ、ユウゲショウ、スイカズラ、グンバイナズナ…、あらゆる植物が、青い雨上がりの光で、瑞々しく光っています。

 中州の長さは100mほどありますが、大きな木はありません。高さ2mほどのイボタノキが、白い花をたくさん咲かせており、それが一番高いようです。
 何年かに一度は大水が出て、全てを洗い流してしまうからでしょう。しかし川の土には栄養たっぷり日当たりも完璧ですから、植物たちはどこまでも旺盛。いつも見慣れたイボタノキもうねる波の樹形なって、飛沫のように花を咲かせます。あちこちで大小の群落が自由に広がり、重なり、これ以上の夢世界はないかのような美しさです。

 数年に一度の大水と、四季の他は、誰の統制もデザインも無く、あらゆる外来種も阻まないというのに、この胸躍る美しさ、完璧な宇宙! アナーキー(無政府状態)の混乱は、人間世界だけのことかもしれません。

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June, 2022

june01 june02

オカトラノオ・恋の舞台

 

 オカトラノオは初夏の丘陵地に普通に咲く花です。遊歩道の脇や林縁に、明るい場所が広がっていれば大群生することもあります。
 名前の通り、花は長い茎にたくさんに付き、下から順番に咲きますから、咲いている部分は太く、先端のまだ蕾の部分が細いのです。その先端がすいっと上を向くのを、虎の尾に見立てたわけです。五弁の白い花は近くで見ても美しく、暑さを忘れさせる爽やかさがあります。

 この花が咲くのを待っているのは、私たち人間だけではありません。メスグロヒョウモンや、ミドリヒョウモンなどのタテハ類の蝶も、よく吸蜜に訪れます。メスグロヒョウモンは名前の通りメスが黒っぽく、墨絵のような美しいぼかし模様があります。オスはオレンジ褐色です。
 多くの虫たちがそうであるように、メスグロヒョウモンも、まずオスが先に羽化します。栗の花の上などにオスだけが集まり吸蜜していることがありますが、これは羽化したばかりで、翅にも傷がなく初々しい感じがします。
 やがてオスたちはあちこちへと、ばらけて飛んでいきます。そしてそこで遅れて羽化したメスに出会います。遠くのメスと交尾することで遺伝子の多様性を得て、メスはあまり動かないことで、自分が生まれ育つことができた環境の中で産卵するというわけです。

 オカトラノオの群生は、メスグロヒョウモンたちが恋をするのに格好の場所です。爽やかに揺れる虎の尾の上で、蝶たちは吸蜜し、出会い、結ばれます。
 6月の頭ごろ、優しい風が吹く晴天の日、空中婚に最高の日は、今週の終わりごろか? 来週になりそうか? オカトラノオは咲き始めたか? そんなことばかり考えているのです。

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