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365日のJournal

4月

april
essay
     

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April, 2022

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ぎんみどり

 

 4月になれば一気に木々が芽吹き、淡い緑色の小さな葉で森は埋め尽くされていきます。そこに山桜のピンクが入り、針葉樹の黒い三角が入り、一年で最も美しい「清明」の風景となります。

 「清明」は二十四節季の一つで、「清らかな雨で、木々の姿が明らかになる」とされる二週間。夏にはほとんどの木が濃い緑となりますが、この芽吹きの季節にはそれぞれの樹種で個性的な色合いがありますから、森林の豊かさ、樹種の多様性が一目で分かる季節というわけです。

 僕の住む東京西部では、つい50年前まで、人が住む近くにコナラ、クヌギの森を造り、そこから薪を得て燃料としていました。今でも残っている森で一番多いのはコナラの木です。
 このコナラの若芽には、白い毛がたくさん生えています。春の光で銀色のように光ります。この「ぎんみどり」が一番多い森が、僕の原風景、武蔵野の雑木林です。
 淡い緑が、透き通るように光る森が、いつまでもここにあってほしいと思っています。

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April, 2022

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檜原村

 

 諸島部を除けば、東京でただ一つの村である檜原村は、僕の大切なフィールドの一つです。
 地元NPO主催の「きのこを学んで、美味しく食べる会」は、もう四半世紀もやっています。東京都のレンジャーとして管轄していたこともありますし、仲間といろいろなイベントや研修もやりました。

 一昨年はエコツーリズムガイドを養成したいということで、インタープリテーションやイベントの基本的なことを、若い人たちに教えました。こんな身近なところに、こんな奥深い自然があって、本当によかったと思います。

 4月、芽吹きから新緑へ変わる檜原村は、格別の美しさを見せてくれます。天然林の中の、樹種のバリエーションが豊富なように思います。それだけ淡い芽吹きの色に幅があるのです。杉や檜の人工林の比率が高く、ぐっと大きな面で、黒が入ってくるのも小気味よいのです。

 この日も雨の中、半日かけてあちこちを見て回りました。こんな大きなダンコウバイがあったのか? この白い花はなんだろう? 遠目に見て引き寄せられ、近寄ってもまたおもしろく美しい、樹木の博覧会を堪能したのです。

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April, 2022

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青い谷のカントウタンポポ

 

 戦国時代の山城の跡が、4月の緑に包まれています。かつて大きな池があったこの場所は、今は水がほとんどなく、広い谷のようになっています。そこにカントウタンポポが夢のように群生しているのです。
 繁殖力の強いセイヨウタンポポに追い出され、カントウタンポポは絶滅してしまうのではないか? と心配されますが、ここにあるのは全てカントウタンポポです。

 このカントウタンポポの群生に気付いたのは、もう20年も前のことです。「かつて敵の侵入を食い止めた山城の急峻な地形が、今、外来植物の侵入を防いでいる」というシナリオが頭に浮かびましたが、今はそうではないと思っています。

 道路の中央分離帯とか、駐車場の隅とか、日当たりがよく乾燥気味の場所では、セイヨウタンポポが圧倒的に優勢ですが、こんな木洩れ日の落ちる、しっとりした森の原っぱなら、カントウタンポポは美しいハビタット(生息地)を継承し続けます。
 両種は生態的には競合しないのです。ただガラガラと自然を壊したような場所に生えるセイヨウタンポポが目立っていただけです。
 変わらない風景のなかには、変わらぬ日本の花が咲くのです。

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